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投稿日:2008-10-06 Mon

8月も中旬過ぎの頃、旅行中の俺は金沢の犀川(さいがわ)のほとりに居た。
俺は、かの室生再生が愛したと言う「犀川」が金沢にあることを知らなかった。それを旅行の途中で知ってからというもの、是非とも犀川のほとりでゆっくりしたかった。
その願いが今叶ったのだ…。
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしやうらぶれて 異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
(これは、室生犀星が歌った詩です。一度は耳にした事がある方も多いのでは?)
しかしここは本当に穏やかなところだ。自分が住んでいる東京とは大違い。
向こう岸を歩く高校生の男女。上を見上げれば雨上がりの青空。
のどかな昼下がり。橋を自転車で渡るおじさん。
ここだけは時間がのんびり動いているような気さえする。
しかし今、俺の数メートル後ろでは・・・後述するが、俺の2人の連れである
外人(日本語は殆どできない)と日本人の内輪での言い争いが続いているのだ・・・。
しかし今は彼らには他人になってもらい、俺一人のんびりしたい。
俺には何も聞こえない。 うん、何も聞こえないんだ。何も…。
あっ、あかとんぼ! もう秋も近いからなぁ。
思えば数日前、知り合って間もない外人の思いつきで行くことになった
東京から金沢・能登への「ま、いいか」というノリで始まった男だけでの3人旅。
能登で俺はレンタカーを運転し続け、あまり風景を楽しむ事もできなかった。
だから今はゆっくりしたい・・・。
金沢はいいところだ。食べ物も美味しいし、出会った人はみんな親切だった。
特に雨上がりの夏空と金沢城の美しいコントラスト。
その風景は一生忘れる事はない。
「金沢の 夏の雲間と 城の跡 」 お、一句出来た…。
……しかし
「ちょっと、一人で離れてないでさー。なんか言ってよ」
と数分後、突然友人に話しかけられて現実に戻される。
事の顛末はこうだ。
俺たちの連れの外人は最終日、東京に夜行バスで戻ったその日に
富士山登頂をする事を望んでいた。
しかも夜間に(日の出を見るため)。ちなみにこの中の誰も富士山には登ったことはないのだ。
みな初心者だ。
しかし、今、俺たちの連れの日本人が明日の富士山の天気予報を調べたところ
降水確率が60パーセントだった。
俺の日本人のツレは延期しようと言ってきた。
俺もそう思う。 夜間での雨天における富士初登頂。
楽しくなるとは思えない。雨に打たれながら黙々と下を向いて、杖を突きながら歩く事になる。
そのうちらの姿は・・・きっと登山というより、雨天の捜索活動のようになるだろう。
しかーし!この外人が全然言う事を聞いてくれないんだ! !
彼はついに暴走しだした。むちゃくちゃな事をいい始める。
雨が降ったって傘をさして行けば大丈夫だし
持ち物はなんとビニール袋!!に入れていけば大丈夫だと言う。
さらには半袖・短パンだって問題ないと言い張る。
うちらが勧める雨具なんて持っていくのは愚かだとまで言う。
もはや手がつけられない状態になっている・・。
富士山の山頂温度は平均5度だといわれる。東京の真冬並の寒さだ。
さらには風も吹くだろう。雨具は防寒も兼ねてのことだ。
大体濡れた体で何分いられるのか。
5合目から登頂し、頂上に着くのに最低でも7〜8時間はかかると思われる。
7時間以上、傘をさして登山なんて出来るわけもない。富士山は風が強いので
傘なんてヘタしたら差した瞬間に壊れるかもしれない。
しかも強風により富士山では雨は上から降るとは限らないというではないか。
大体、傘さして、ビニール袋片手に富士登頂している人なんて見たこと無い。
ボランティアでゴミ拾いに行くわけじゃないんだっつーの!
しかし外人は譲らない。
おばさんでも登ってるような(彼はその光景を写真でみたことがあるらしい)富士山みたいな
small mountain なんて多少の雨が降ったからって俺たちが登れないはずがない!!
と言い張る。 山頂では「別に雨具を持ってなくたって、くしゃみをしながら見れば問題ない」
とまで言う。俺はこんなに浅はかな人を見たことがない。
「わかった。じゃこうしよう。君一人が富士山に行って悲惨な目に遭うっていうのはどうだろう?我々は家で待機している」
なーんて映画みたいに言えたらラクだなぁ。
今回、道理はこちら側にあり、そして連れの日本人は頑張っている。
しかし彼には悪いが、俺はもう説得するのは疲れた!!
もう俺は疲れはてて英語も耳にしたくないんだ。
もう全てを放棄して、今はゆーっくり犀川の流れと雲と町並みを見ていたいのだ。
ゴメン日本人の方の友人。今は外人からの波を防ぐ防波堤になってくれ。
この外人の非論理的なワガママは
夜行バスで東京に戻った時にうんざりするほど繰り返される事だろう。
なんたって富士登頂は次の日の夜なのだから。
そのときまではのーんびりしたい。
あ、猫がいた!
猫よ、この問題だらけの夜間初富士登頂なのに、今後ろの方で
「No problem !」とか叫んでる外人を説得してくれ・・・。
もはや人間業では不可能なんだよー。
お越しいただいて、どうもありがとうございました。
この外人、知る限りでは普段は明るくいいヤツ(?)なのですが・・・。
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